キズの楽曲を徹底解説!~『傷痕』編~

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今回は【キズ】の楽曲解説~『傷痕』編~ということで書いていこうと思う。

以前の楽曲の記事はこちらから

 

まずは一曲目から解説していこう。

キズ 3rd SINGLE「傷痕」MV FULL

冒頭からベースのスラップがいきなり炸裂。

0:08辺りのベース単体になるところを聴いてもわかる通り意外とバキバキした音の作りではなく、ミドル帯域を大事にしたまとまりの良い立ち位置のサウンドメイクである。スラップもバチバチなサウンドではなく、耳に痛くない鳴りをしている。

ギターリフはドラムとユニゾンしつつ、バグったような細切れのフレーズ。

その裏で流れるようなピアノが鳴っていたかと思えばシンセがサウンドに広がりを持たせている。

Aメロは超攻撃的なビートで駆け抜けていくかと思えば、いきなりギターが鳴りを潜めてみたりする。

Bメロでは左右でギターがそれぞれ違うフレーズを奏でており、左がバッキングテイストで右が広がりを持たせるフレーズになっているといったところだろうか。

サビに入るまでわずか1分。

ここまでに繰り出した手数の多さや展開の多面性はバンドが持つ死に急ぐような全力さを体現しているかのようだ。

サビではボーカルのハイトーンが容赦無く刺さってくる。

直後急転直下、ドラムのタムを中心に回すフレーズの中、ベースのスラップなのかわからないループフレーズで落としたかと思えばその展開も束の間。表打ちの攻撃的な展開。

かと思いきやすぐさまBメロが還ってくる。2番のBメロは少し展開を変えて後半に上昇していくスタイル。右のギターはアルペジオチックなフレーズでサビ前を際立たせる。

サビの頭は爆発したかのように低音が響いている為、デスコアのビートダウンなどで使われている爆発音を重ねる手法を使っているかもしれない。

2番のサビ後は一瞬ブレイクが入っており、その後のリフが戻ってくるセクションに入った瞬間の爆発力を高めている。

このセクションではシンセが上でなっているのだが、最後のサビに入る直前のフィルに紛れてピアノも鳴っている。このフィルの中ではアコギが鳴っているようにも聴こえるのだがもしかしたらベースのフレーズがそう聴こえるだけかもしれない。

ラストサビの頭はボーカルでイン、途中からバンドインというアニソンなどでよく使われる手法だがやはりこの演出はテンションが上がる。

サビ全般通して下のコーラスが入っているのだがラストのサビの一番キーが高くなる箇所のみコーラスが外されており、とても伸びやかに聴こえる。

アウトロではぶん殴られているかのようなユニゾンフレーズの上でクラシカルなシンセが鳴り響いて物々しく楽曲の終わりを締めくくっている。

 

2曲目の「怨ミ節」は一転、キズのメンバーのバックグラウンドの広さを感じる演歌、歌謡曲テイストのの楽曲である。サウンドはキズらしくヘヴィかつメタリックなのだがその上にアコギがふんだんに鳴っており、今までのキズのイメージと違って聴こえる。

6/8拍子であることも手伝って船に揺られているかのような水っぽさを感じる。

ギターは聴き馴染みのあるお得意のピッキングハーモニクス混じりのフレーズが随所に散りばめられており、ウワモノはピアノとアコギらしき音が重なり歌謡曲らしさを演出するフレーズを奏でている。

ボーカルはハモりがとても多い楽曲になっており、上にも下にもハモりが入っているのだが、ボーカルだけになる瞬間はハモらず歌い上げて際立たせたりしている。

「死ねばいい」という歌詞の部分ではサウンドがおとなしくなる代わりに歌が幾重にもなり独特の浮遊感を演出。

楽曲の浮遊感とは対極にリズム隊はどっしりと力強いサウンドでそのコントラストが見事である。

2番サビ後にイントロと同じコード進行と見せかけて2個目のコードから転調してCメロに入り、そこから半音ずつ下がっていき、またサビに戻るという手法がまるで化かされたような見事な曲展開である。

こういった風変わりな楽曲を演奏しても随所で技が光る彼らはやはりセンス、テクニック共に現代のV系シーンの中でもずば抜けている。

 

続く「十九」は一転、青春を感じさせるような爽やかなミドルテンポの楽曲である。

普段のサウンドでは救いのない絶望感を感じさせてくれる【キズ】だがこの曲では小難しいフレーズなど入れずにストレートに歌の力で勝負してきている。

学生の頃を思い出してしまうようなピアノやアコギが全編入っており、全体的にライトな雰囲気になっている。2番のAメロからはストリングスも入ってくる。

楽曲の多くの場面でドラムがスネアを中心にリズムを担っていて、ギターのバッキングも前へ前へ進んでいくようなイメージである。

こういった音で埋めていない楽曲というのは意外と演奏力が如実に出る。これだけ聴かせる楽曲を活動初期から出せるというところから見ても、重低音で誤魔化しているわけではない本物の演奏力であることがわかる。

 

最後の「EMIL」は疾走感溢れるロックナンバーである。

アコギの鳴りとボーカル来夢さんが持つ独特の声質が相まってサビは4つ打ちながら切なさのある楽曲になっている。

2番になるとアコギとエレキの2本のみの上でボーカルが歌うパートがあったり、複雑なパターンのドラムとのユニゾンがあったり一筋縄ではいかないアレンジがここでも冴えている。

ラストサビの最後では三連符で半音ずつ下がっていくフレーズがあり、ここも聴き流させないフックとなっているのだ。

 

 

ざっと駆け足で楽曲を解説してきたがいかがだったろうか。

もしMVだけ観てかっこいいなーという方がいたら是非音源をダウンロードして聴いてみてほしい。ストリーミング配信はしていない為、ちゃんと聴く為にはダウンロードするしかないのだ。

キズの「傷痕 - EP」
アルバム・2018年・4曲

そして既に聴いていた人達の中でなんとなくかっこいい程度に聴いていた方もどうしてかっこいいのか、なんでこの曲が好きなのか。その理由に気づくことができていたら幸いだ。

【キズ】は本当にアレンジが細やかで随所にタダじゃ終わらせないと言わんばかりのフレーズを盛り込んでくるバンドだ。

楽曲を聴く上で1番と2番のフレーズの違いを追ってみたり、音源では複数本鳴っているギターをライブではどう再現しているのか追ってみるのも面白いかもしれない。

まるで薄っぺらなファンを振るい落とすようなスタンスをとってきている彼らだが、もしこのような目線で彼らの音楽に触れることが出来たら。

或いは振り切られることなく、彼らが見据える先を共に見ることが出来るのかもしれない。

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