業界人からも超高評価!MUCCの怪作『壊れたピアノとリビングデッド』の全曲解説!

音楽レビュー

おはニーハオ!

タンタンメンですよろしくお願い致します!

 

今日は先日発売された【MUCC】

通算2作目のコンセプトアルバム

『壊れたピアノとリビングデッド』の解説をしていこうと思う。

 

ファンサイドのみならずライターやバンドマンサイドからも

とてつもなく評価の高い今作だが

どうしてこの作品がここまでの高評価を受けるのか

過去のインタビュー記事も交えながら解説していこうと思う。

是非実際に音源を聴きながら読んでほしい。

 

 

まず今作は[ホラー]をコンセプトに

ピアノを大きくフィーチャーしたアルバムになっている。

どこかアンティークを感じさせるようであり

ドールや古い洋館をイメージしてしまうような世界観。

退廃的でありながら【MUCC】の持つ

ここが時代の最先端だという空気が見事に融合している。

 

 

1曲目の「壊れたピアノ」は今作の方向性を示すように

聴く者を異界へと引きずり込む。

その先に待っている「サイコ」のバンドインの瞬間

いきなりマウントを取られ、打ちのめされる。

それこそ初期の【MUCC】が持っていたダークで絶望的ともいえる

ドロップAのへヴィサウンドが引きずり込まれた聴き手を殴る。

近年の【MUCC】はデジタル色の強い楽曲が多く

初期の頃の【KOЯN】を彷彿させるようなサウンドメイクではなくなっていた。

それが今回のコンセプトアルバムでサウンド面は原点回帰している曲が多い。

[リビングデッド]と銘打つだけあり今作は

過去のボツ曲を掘り起こしたとインタビューでも答えているが

初期楽曲と同じドロップAチューニングを起用したのは

そういった背景があるからかもしれない。

そんなバンドサウンドの上に歌詞にも出てくる[壊れたオルガン]のような音が乗り

アルバムコンセプトの[ホラー]な空気感に仕上がっている。

ただどこかコミカルさがあるポップな空気よりのものだ。

 

また、ライブで盛り上がること間違いなしな

シンガロングパートもサビに織り込まれている。

1曲通して複雑なプレイをしているわけではないが

サビの前半は広がりのあるコードを鳴らし折り返した後は同じコード進行だが

オクターブ下の低音バッキングを弾いて変化をつけたり

細やかなアレンジが聴き手を飽きさせないし、展開をドラマティックにする。

ドラムのリズムパターンもめまぐるしく変わり

楽曲を聴き流させないフックがある。

 

 

「アイリス」は虚ろなレゲエ、とでもいえばいいのだろうか。

色のない浜辺を歩いているようなアレンジとそこに絡む達郎さんの淡々とした語り。

かと思いきやエグみのある低音とシャウトが飛び交う。

レゲエといえば【SiM】が頭に浮かぶが

同じヘヴィサウンドとレゲエの融合でも彼らとはまた違った混ざり方だ。

1曲の中で表情を幾度となく変化させて世界を繰り広げ続ける。

曲展開を小奇麗にまとめようとしないカオスさも【MUCC】の味わいの1つだ。

 

 

続く「ヴァンパイア」では小気味よいクランチトーンのギターに

軽快なピアノが絡んでその上に歌謡曲テイストなメロディが乗る。

サビに入るとピアノの音色はオルガンの音にシフトして

コーラスやタンバリンも加わりまるで音に乗って浮かんでいくようだ。

達郎さんの深みのある太い声がとても心地よい。

途中のギターソロやアウトロなどではサビとは対照的な

ファズがかかった潰れたギターが【MUSE】っぽく印象的だ。

 

「In the Shadows」は【KOЯN】系の空気感満載の楽曲である。

1曲前の「ヴァンパイア」とは打って変わってスネアの音色がだいぶカンカンしていたり

ボーカルもリズミカルでラップ調であったりして【MUCC】流のミクスチャーといった印象。

楽曲中盤では転調したかと思いきやビートダウン的な要素が出てきたり。

そして何事もなかったかのように元の展開に帰ってくる。

とってつけたようなビートダウンや転調をするバンドは近年増えたが

ここまで秀逸に楽曲を展開していけるバンドはほとんんどいない。

数多を飲み込み消化してきた【MUCC】だからこそのクオリティだと感じる。

2006年のアルバム『6』に近い空気感も匂わせる。

 

続く「積想」は歌とピアノの力が存分に発揮された楽曲ではあるが

ストリングスも混ざり合い壮大な哀愁漂う世界感を演出している。

サビが終わった途端ベースのみランニングフレーズを弾き始め

そのままバンド全体がジャジーなパートへなだれ込む。

そこからストリングスなどを駆使しぶつ切りにならず帰還する。

この自然な帰還を出来てしまうことが本当に異常である。

アウトロではストリングスが序盤より本数を増やし

掛け合い、重なり、物語の顛末を締めくくっている。

 

 

「百合と翼」はどこか歌謡曲っぽさがあるギターリフが印象的で

全編通してどこか懐かしさが匂い立つような音像である。

テンポに頼らないドライブ感の上で達郎さんが歌い上げているのだが

特筆して何か変わったプレイをしているわけではないのに

バックの演奏だけでも既に【MUCC】らしい楽曲である。

僕の個人的な感覚なのだが【MUCC】の楽曲は常にどこか影があるというか。

どんなに晴天でも必ず影は生まれるのと同じように

【MUCC】はどんなに明るい楽曲を演じようが

必ずそこに哀愁が落とされているような。

それはもちろん達郎さんの声質もそうなのだが

楽器隊の音質もコード感などにすら影があるように感じるのだ。

楽器隊だけでも情景を表現できるほどに演奏力が高いということだと思う。

 

 

「カウントダウン」はアコギが全面的にフィーチャーされた

疾走感のあるナンバーで爽やかな風が吹き抜けるようなアレンジである。

アコギが入るとグッと雰囲気が垢抜けるものだ。

2番のAメロで楽器隊がユニゾンしてバッキングに徹しているところは

気持ちのよいグルーブ感が生まれている。

【MUCC】というとヘヴィなサウンドのイメージがついてまわるが

ロック然としたビートを刻むとまたこれがめちゃくちゃクールなのだ。

2006年の『極彩』に収録されている「ディーオージー」なんかも

イカしたビートロック系だ。

縦ノリのビート感と【MUCC】が得意とするヘヴィサウンド、

更にアコギのサウンドまで気持ちの良いところで混じり合っていて

普通のロックバンドにもそこらのヘヴィなだけのバンドにも

到底真似ができない境地に辿り着いている。

 

 

最後の「Living Dead」は切ないピアノの音色とアコギが鳴り

重厚な楽器隊のサウンドとの対比が美しい。

左右それぞれから囁いてくる歌声や感情剥き出しに吐き出すような叫びが

轟音系のギターと混じっていわゆるエモいアレンジになっている。

しかしこれだけの轟音の中で実はコードは2つ3つしか使われていない。

シンプルなコード進行をクリーンと激情の対比を利用してここまでの大作に仕上げている。

こういったライブの最後感があるような曲は

意外と楽曲がシンプルだったりするものだが正にそのパターンにあたる。

 

 

全曲通して聴いてみて1番思ったのは

ギターのサウンドが曲毎にすごい変わるなーということ。

ミヤさんのギターは本当に職人気質という印象があり

楽曲毎に並のプレイヤーではたどり着けない最適解をはじき出してくる。

バンドインした際には確固たる圧を稼いだ重音を鳴らすのだが

イントロなどでギターのみになる時に一聴してあの曲が始まるな、

とわかるような音の使い分けが見事である。

 

 

今回のアルバムは1曲の中で場面転換する楽曲が多く収録されている上に

楽曲の並び順も前曲との対比がなされるようになっており

アルバム1枚を通しての聴きごたえが異常なほどである。

しかも過去のあの楽曲っぽいなーと感じられる懐かしさもある。

その上最近で1番のヘヴィサウンドが鳴っているのに

普段よりもピアノがフィーチャーされている影響なのか断然聴きやすい。

 

 

目まぐるしく

ボリューミーで

懐かしく

ヘヴィで

聴きやすい

 

こんな感想を抱いたアルバムは初めてだったので

何を言ってるかわからねーと思うが

俺もなにをされたかわからかった状態である。

 

『怪作』とまで言われた今回のアルバムは

流行り廃り関係なく存在感を放ち続け

次世代のプレイヤー達にも影響を与え続けていくことだろう。

 

 

 

 

 

 

 

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